ごく個人的なことですが、初めて実家を離れて弘前に引っ越したのがちょうど 10 年前の 3 月 10 日でした。右も左もわからない青森で生活することになり、パーマネントの仕事につくのも初めてで、まあ、とりあえずは5年もつかどうかだなあ、と、思っていたのが、実際に暮らしてみると、忙しいながらも充実して、あっという間にその5年が過ぎて、これからもこういう調子で過ごしてゆけるかな、と思っていたその次の日が、 2011 年の 3 月 11 日でした。前の日に感じた多少の感慨は即座にふっとんでしまいました。
それから、2年、3年、4年と経ち、でも、やはり、時間が経っても、というよりは、むしろ、経てば経ったなりに、割り切れない気持ちがぬぐえないようにも思います。
NHKスペシャルで、「風の電話」という番組をやっていました。心を打たれました。だんだん、震災について扱うときの「お約束」みたいなものができあがってきて、伝え手の独りよがりな意図や都合、おざなりの結論のために構成されたストーリーの中に災害に遭われた方々を押し込めているのではないか、という気がしてならない報道もときどき見受けられるのですが、そういうくさみを全く感じませんでした。いなくなった人に電話をかけるというシチュエーションで初めて口にすることのできた、余りにも重くて大きい、簡単に整理のつけようのない辛い言葉から、あのような形で大切な人と別れて5年を過ごすということがどういうことなのかが、直截に伝わってきました。
例年通り、このアルバムを聴いています。