数学セミナー 10 月号の特集「ガンマ関数とは何か」 で、「 $q$-ガンマ関数」の紹介記事を担当しました。
依頼のメールをいただいたとき、ガンマ関数で特集とは数セミもマニアックなところを攻めるなあ、と驚いて、そして、$q$-ガンマ関数の記事を載せるなんて、さらに、私に原稿依頼するなんて(笑)、と、そのマニアックさへの驚きが3重くらいになったのですが、実は、しばらく前に、数セミではなかったのですが、日本評論社からの別の原稿依頼を、編集者の方がわざわざ大学の研究室にまでお越しになったのに、私の専門ではないから、と、お断りしてしまったことがあり、申し訳なく思ってもいたところでしたので、専門ではない、とは言うわけにもいかないこの話題について、原稿を書くことをお引き受けしました。
完成した記事に、ちょこっと、「パラレル・ワールド」という言葉を入れたのですが、 当初は、某有名小説をパクって、もとい、リスペクトして(笑)、1999 年から 1$qqq$ 年の「無限に近づくことは許されない世界」に入り込んでしまった主人公が、 「うわあ、ここでは階乗の役割をするはずの $[n]_q!$ が $n \to \infty$ で $1$ に収束してしまう!!」とか、「$\sin z$ の無限和の類似と無限積の類似が違う関数になる!!」とか、「合成関数の $q$-微分の公式がない!!」などと、わざとらしく(笑)いろいろなことに驚いた挙句に、出会った $q$-ガンマ関数をもとの世界に連れて行こうと、高速道路わきの階段の(笑)古典極限 $q\to 1$ を通り抜けようとして、Andrews のモノグラフの付録の Gosper の証明を試みて、でも、無限積と極限を交換するには一様収束を証明しなければならない、と、最後の戦いを繰り広げ、Koornwinder の $q$-Jacobi 多項式の論文の付録にある厳密な極限をとって、$q$-ガンマ関数がもとのガンマ関数になる、という怒涛のストーリーを書きかけたのですが、読み返してみると、内輪受けのうえにダダスベリ(笑)、という最悪の状況で一気にクールダウンして、結局は、慌てて、いたって普通の文章を書くことにしました(笑)
執筆している最中は他の記事がどのようなものになるのかわからなかったのですが、改めて特集になったものを読んでみると、整数論や統計の話題など、いかにも恰好よく、他の先生方はご自分の専門と絡めてより高度な話題に踏み込んでいるようで、私の記事だけ易しいものになってしまっていました。大学1、2年でも読めるように、と強く意識しすぎてしまったのですが、志のある読者の方々にとっては、そんなやわなことを言わなくてもよかったようです。原岡先生の基調的な記事で丁寧な解析接続の解説もあったので、そんなことなら$q$-差分方程式の接続問題についても書けばよかった、とか、$q$-ベータ積分から $q$-セルバーグ積分や$q$-直交多項式への話をもっと突っ込んですればよかった、とか、後になってみると、もっと、業界(?)の宣伝をしなかったことを反省をしています。
ということで、私が書いた部分については暖かく読んでいただけましたら幸いです(笑) それ以外の記事に関しては、とても興味深く読めると思いますので。
ところで、自己紹介をするときの「・・・生まれ」の欄はいつも困ってしまいます。母親が実家に戻ってお産をしたので、戸籍上の出生地は北海道なのですが、生後3か月くらいからはずっと千葉に住んでいるので、どっちを書いてもしっくり来ないような気がします(笑) こういう場合はどう書くのが普通なのでしょう?