2014年8月21日木曜日

成績をつける

先週、新任地での初めての成績をつけ終わりました。

こちらに来てほっとしたことがあります。前任の大学での一般教養では、90 点以上の「秀」評価は全体のうちの 5 %以下、80 点以上の「優」はは半数以下にすることが「努力目標」とされ、昨年度は一般教養の全科目の 10 点刻みの人数の分布表が配られてくるようになっていて、成績がつけにくくなってしまったことから解放されたことです。

就職関係で、うちの大学の 90 点以上はこんなに「優秀」なんですよ、と、いいたかったのか、奨学金などの選考で、一目で「優秀」な人がわかるようにする、ということだったのか、その辺の意図はよくわからないままだったのですが。

昨年度まで担当していた行列の講義は、人文学部、教育学部(文系・理系含む)、医学部保健学科、農学生命学科の選択科目になっていて、高校時代に理系だった学生さんが多い教育学部数学専修と医学部保健学科の学生さんが大半という構成でした。そこで、5%の方々しか解けない問題を 10 点分、あと 10 点分は半分の受講者の方々しかとれない、というように試験や課題を設定すると、標準より難問奇問を入れざるをえず、おそらく、高校で文系だった方の大半は残った標準的な 80 点のうちから  60 点を取らなければならなくなるので、単位取得ですら相当に難しくなり、ましてや、理系出身の方々に伍して「優」や「秀」をとることは並大抵のことではなくなります。就職や奨学金の都合でよい成績をとりたい場合、一般教養で数学を選択するのは得策でないという判断になり、それは、例えば、経済を専攻する学生さんが行列の勉強をしないように大学が薦めているようなもので、本当にそれでいいのかなあ、と、釈然としなかったのです。 

いまどき、小学校でも相対評価なんかしてないんだけどなあ、と、思いつつも、本当に上から順番に成績を並べて、5パーセントのところまでを 「秀」の評価にする、ということにすると、今度は、例えば、 98 点までが「秀」で 97 点以下が「優」とか、その区切りにあまり意味を見いだせない形になってしまいます。

私の担当以外の大半のクラスは同一学部同一学科で構成されていたので、少しは性格が違ったのかもしれず、事情が通じにくいというところはあったのかもしれませんが、それについても、ようやく医学部医学科だけは分けてもらえたものの、せめて、文系と理系は別々にしてください、という要望はことごとく無視されていたのでした。

「努力目標」より強い指示が来た時は、上のような事情と、あと、年度初めに評価の方法を明言したので途中で変更するのは望ましくないであろうことを説明してその年度分は例年通りにするように主張しようと思ってはいたのですが、前述した全体向けのアナウンスみたいなものがあっただけで、とりあえず私個人への指摘はなく、昨年度はそのままの成績を提出しました。しかし、年度初めから方針を堅持するように命令されるようになれば従わざるを得ないかもしれないし、自分の責任ではないことで、色々と齟齬が出るのは目に見えているので、困ったなあ、と思っていたのでした。

さらに、個人的には、どうも、5パーセントだけ90点以上、というのはしっくり来ない、ということもありました。あれだけシラバスに授業の到達目標をちゃんと書け、という指示をしているのだから、「行列の計算ができる」という目標を達成したら 100 点でいいんじゃないか、と思うのです。理想論なのですが、5パーセントに入るために学生さんが競争するのではなくて、みんながきちんとレベルをクリアして、100 点を取るようにしたかったのですけどね。

似たような問題を繰り返し解くシステムにしたので予測がつくようになっているといえばそれまでですが、授業でやっていたレベルのことができれば、たぶん、私が大学1年のときよりも行列の計算は身についているのではないか、というくらいのことはしたつもりで(これは、大学1年の私が出来なかったということではなく、今の私の教え方がよいのだ、と、信じたいのですが・・・(笑))、 数学専修だけのクラスだったら、さらに抽象線型空間やジョルダン標準形までハイペースで勉強して5%しか 90 点以上がとれないようにしてもよかったのですけど(ウソです(笑))、前述のような一般教養の授業では性格が違うでしょう。おそらく、普通に講義をして、それ以外にフォローしなくても、5%くらいの方は 90 点以上がとれるでしょうし、それで済むなら、何のために、毎回講義終了後にHPを更新したり、何時間も学生さん達の質問につきあったりしているのかわからなくなってしまって、こちらのやる気もガタ落ちになってしまいます。教育学部の専門科目ではそういうことはなかったので、一般教養の1科目だけだ、といわれればそれまでだったのですが、後々まで大切になる科目ですし、ちゃんと勉強した方に、頑張ったね、という評価が出せなくなると、どうも居心地悪いなあ、と、憂鬱だったのでした。

今度の職場ではそういうことはなく、すべての科目で、最初に設定してアナウンスした評価方法で成績をつけることができました。 やはり、他の方の成績に関わらずこうするとこういう評価になる、というほうが、学生さん達もわかりやすいし、努力のしがいがあるように見えます。私としては、そういうことをプラスに活かして授業したいと思ってはいるのですが。