2015年11月17日火曜日

ロマンチックじゃない

複素数に関心があるというゼミの3年の学生さんと、神保先生の複素関数入門を読むことにしました。昨日、べき級数で指数関数と三角関数を導入して、定義から
\[
   e^{i z} = \cos z + i \sin z
\]
となる、というくだりのときに、ここで $z=\pi$ を代入したら、オイラーの公式
\[
    e^{i\pi} = -1
\]
になるよねえ、と言ったら、その学生さんが、ああ、と、残念そうな顔をしました。

どうも、$e$ とか、$\pi$ のような無理数と虚数 $i$ を組み合わせたら $-1$ となるオイラーの公式に尽きせぬ不思議さや魅力を感じていたらしく、それが複素数に関心を持つ一因でもあったとのことで、繊細で複雑な美しい証明を期待していたようです。そういう視点からすると、あっけなさすぎで、無味乾燥でジェネラル・ナンセンス的(?)に映ったようです。

既に複素数に関して擦れきってしまった私は、$e^{i\pi}=-1$ を見ても、まあ、複素平面上の半回転の変換だからそれは $-1$ だよねえ、くらいにしか考えられなくなっていて(笑)、「博士の愛した数式」を読んだ時も、主人公の「ルートのお母さん」と、博士の義姉が言い合いになったとき、博士がその式を書いた紙をたたきつけて、争いをおさめてしまったところで、数式を見てそういうふうに思うんだ、というのが妙に新鮮だったくらいなのですが(笑)、そういうほうが少数派のようです。

若者の夢を消してしまったみたいで後ろめたく(笑) 、慌てて、いや、留数定理は本当に面白いから、と、行く手の希望を強調したのですが、まあ、留数も $z^{-1} $ の積分が $\log z$ というだけと言ってしまえばそれまでだからなあ、と、頭を抱えています(笑)