2014年8月30日土曜日

熱帯JAZZ楽団 Midsummer Tour "灼熱" 2014 @ルネ小平

先週、インターネットで他のライブの予約をしようとしたときに熱帯JAZZ楽団のこの公演が偶然目に入り、早速チケットを購入しました。直前だったので不安だったのですが、大ホールの前から 10 列目くらいの比較的前の席がとれました。8月の上旬に目黒でもライブがあったようですから、そちらを聴きにいった方のほうが多かったのかと思います。ここしばらくアルバムの発売がなかったのでノーマークだったのですが、7月に3年ぶりの新譜が出て、そのツアーだったようです。

会場が西武新宿線の小平駅のすぐ近くで、行くのがかなり面倒そうです。私の住んでいるところからは、武蔵野線で新秋津まで行き、これが「乗換え」という範囲なのか、と思うくらいの距離を西部池袋戦の秋津駅まで歩いて、そこから一旦所沢までいってさらに西部新宿線に再び乗り換えなければならないのです。それで、周辺の地図を拡大してみると、武蔵野線の新小平から歩いて 1km ちょっとのようでした。距離的には余裕ながらも方向音痴なので(笑)不安だったのですが、青梅街道をまっすぐ行ってそれらしい交差点を曲がるだけのようなので、そちらで行くことにしました。

心配するほどのこともなく順調に会場に到着し、時間に余裕があったのでホールの喫茶室でコーヒーを飲んでいたのですが、周囲にお年寄りが多いのが意外でした。中ホールあたりで平行して催しがあるのかなあ、と思ったのですが、あとで掲示をみてみてもそうではないようです。熱帯JAZZ楽団、なんてコテコテのネーミングですし、友の会的な情報で、チラシのように、ご存知の懐かしいヒット曲を熱いラテンに載せてお届けします、というようなキャッチフレーズがあると、ムード歌謡的なラテンのバンドかと思った方々もいらっしゃったのかもしれません。実は、懐かしのヒット曲、というのがビートルズ以降、 フィル・コリンズ、ケニー・ロギンズ、ポリスなどの70 - 80 年代の洋楽が主で、それ以前の時代の楽曲は、「マイ・フェア・レディ」からの「教会に間に合うように行ってくれ」くらいだったので、「懐かし」ではなかった方も多かったのではないかと思いますが・・・(笑) 日本が世界に誇るラテン・ジャズ・バンドなので、詰め掛けたファンでごった返しているとばかり思っていたので、そういう客層で、当日券まであったのはむしろ意外でした。

10 数年前、2作目のアルバムで、 EW&Fの"September" のアレンジにぶっ飛んでしまって以来、ずっと気になっていたグループです。私にとって「黒歴史」に属することですが(笑)、弘前にいたとき、大学の先生方が公開講座的に話をする、という、NPO法人の方々が行っている地域のFM番組に出て醜態をさらした(笑)ことがあります。話の合間に好きな3曲を流していいですよ、といわれ、このバンドのラテン風「ムーンライト・セレナーデ」をその1曲に選び、これをかけてもらったときに、CD係の方に、ふーん、いいじゃん、これ、と感心され、内心得意だったのでした。以前は地方にいてなかなか直接聴く機会がなかったのですが、かように因縁浅からぬ(?)バンドなので、今回、初めて生の演奏に接することができて興奮していました。

7月に発売された新アルバムのレパートリーがメインで、アルバムの標題作でもある、フィル・コリンズの "Easy Lover" で幕を開け、最初から、爆発的なアンサンブルに、スリリングなソロが続き、その間、リズムはご機嫌、という連続で、楽しくてしょうがない演奏でした。ブラスが 12 人(トランペット4、トロンボーン4、サックス4)にリズム5人(キーボード、ベース、ドラム、パーカッション2、もちろん、うち1人はリーダーのカルロス菅野さん)という編成なのですが、見れば見るほど、どの奏者もすばらしく、よくこんなメンバーが長いこと揃っているなあ、と感心させられます。特に、日本のラテンベース界における唯一無二の存在である高橋ゲタ夫さんのグルーブはいつもながら凄いものがありました。

このバンドの存在を知ったころ、余りの豪華メンバーに、きっと、企画もののオールスターセッションなのだろう、と思っていたのですが、今や結成 19 年になっています。前述のようにここ3年ほどアルバムの発表がなかったので、このままフェイドアウトしてしまうのかなあ、と思ったりしていたのですが、カルロスさんはじめ、皆さんのMCでのコメントもこれからの活動に関して非常に意欲的で、今後の展開も楽しみです。

ただ、今回の演奏は、コアなファンと、何気なくご近所のコンサートに来てみたら余りにもパワフルでびっくりしてしまった初めての方々が半々、という感じで、カルロスさんも、ラテン初心者への定番の話題である、コンガとボンゴの違い(笑)、などを説明しながら内輪のお約束を挟む、など、MCには苦労していたようです。バンドの今後の活動について、我々もブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブを目指します、と、話していたので多いに嬉しかったのですが、冷静に考えると、ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブが何だかわからない人たちもいたのでしょう。難しいものです。

こういう音楽に触れる裾野を増やすのも大変なようで、今回も、会場でCDを買ったらあとでメンバーからサインをもらえるサイン会を開催したりしていました。実は、私もCDを買ったのですが、絶対にジャケットにコーヒーをこぼすので(笑)、サインしてもらってもしょうがないなあ、と、そのまま帰ったのですが(笑)

そういう割合の聴衆なので、好きな人もスタンディングで踊りだすのを躊躇したようで、いつものペースに乗せるのは難しそうでした。とはいっても、後半、次々にダンス・チューンを繰り出すと馴染みの方々はたまりかねて立ちはじめ、会場はノッてきました。私も年甲斐もなく立ち上がろうかと思ったのですが、待て、ここで立ったら絶対にバテる、きっと、アンコールは "September" だろうから、そこまで我慢しよう、と、46 歳の悲しさで(笑)、そんなことを考えているうちに幕が閉じました。

アンコールのスタンディング・オベーションで立ち上がって、メンバーの皆さんが戻ってきて始まったのがやはり、"September" だったので、そのまま、今度は年甲斐もなく、踊る、とまではいかなくても、跳んだり跳ねたり、不恰好に体を揺らしたりしていました。スタンディング・オベーションはしょっちゅうしていますが、そのまま、立っていたのは本当に久しぶりでした。

念のためですが、もしかして、同じ会場に学生さんはいませんでしたよね? (笑)

とても楽しく過ごせたのですが、帰途、再び、新小平まで歩いているとき、ふと、お遊戯みたいなアイドルのコンサート(暴言ですか?(笑))で、武道館だ、ドームだ、国立競技場だ、というならば、これほど国宝級にハイレベルなのに難解でも実験的でもない楽しい音楽で東京ドーム3個分くらいは埋まっても可笑しくないのに、何だか不思議だなあ、本当はみんな音楽なんか好きじゃないのかなあ、と、思ったりもしました。

まあ、好きな人が少ないおかげ(?)で、こんな素晴らしいコンサートを手軽に聴くことができるので、私は得をしているのでしょうが、少なすぎてそういう機会がなくなってしまうのも困りますし、難しいところです。

とにかく、次は、もっと前からスタンディングできるように、体力をつけたいとおもいます(笑)

あと、いつか、熱帯JAZZ楽団で、松岡直也さんの曲をやってほしいなあ、と、思うのですが、無理でしょうか。