2014年6月14日土曜日

Hamilton de Holanda "Mundo de Pxinguinha"

ワールドカップが始まったから、というわけではないのですが、最近、ブラジル音楽をよく聴いています。しばらく前までショーロ関係のアルバムでいいのに出会わなかったのがちょっと不満だったのですが、昨年くらいから、また、面白い作品が手に入るようになってきて、関心が高まってきました。

このアルバムは、昨年、購入してちょっと聴いた後に引越しでしばらくご無沙汰していたのを、思い出してまた聴いています。話題性、という意味では、ここ数年、というか、ショーロの歴史の中でも屈指の、ということになるのではないかと思います。

バンドリン奏者のアミルトン・ジ・オランダが、ブラジル音楽の父、と称されるピシンギーニャの作品を、さまざまなゲストと1,2曲ずつ共演する、という企画なのですが、その共演者が、まず、南米からの、チューチョ・バルデス(p)、オマール・ソーサ(p) というあたりだけでも凄いのですが、さらに、ミュゼットのリシャール・ガリヤーノ(acord) 、ジャズのステファノ・ボラーニ(p)、しまいには、ウィントン・マルサリス(tp) まで、という、何とも贅沢な布陣です。その選曲も、なるほど、共演者のイメージどおりだなあ、と、思うものも、そうか、そうきたか、とニヤッとさせられるものもあり、聴き飽きない展開になっています。ゲスト・ミュージシャンも敬意に満ちた好演を連発していて、彼らの個性により、ピシンギーニャの音楽の持つ多様性を再発見できたように思えます。ピシンギーニャの作品が、ブラジルにとどまらず、より普遍的な世界でのスタンダードになりうることが、とても嬉しく思えました。

古くからの音楽であるショーロは、レパートリーも、演奏形態も固まってしまっているきらいがあり、伝統芸能になってしまうのでは、という心配があるようにも思えます。そこから抜け出す可能性としては、かつてのカメラータ・カリオカのように新しいレパートリーを開拓するか、または、今までのスタンダードを新しい感覚で捉えなおすか、ということを考えなければならないのかもしれません。この前のアントニオ・アドルフォの作品や、この作品は、後者の方向で、実り多い試みがなされていることを示すものなのでしょう。

アミルトン・ジ・オランダについては、ヤマンドゥ・コスタ(g) とのライブアルバムを聴いて、凄いなあ、と感心していたのですが、今回、自分の専門の音楽だからとはいえ、これだけの超一流ミュージシャンを向こうに回して圧倒的な音楽を成立させたのを聴いて、やはり、とてつもない逸材なのだと感じました。

ウィントン・マルサリスと共演した 「1対0」という曲は、1919 年、ブラジルがサッカーの南米選手権(まだ当時はワールドカップは始まっていませんでした)で、ウルグアイを1対0で下して優勝したのを記念してピシンギーニャが作った曲で・・・、と言い始めると、また、サッカーの話になってしまいそうですが(笑)