2014年5月24日土曜日

ルー・ドナルドソン・カルテット@ブルーノート東京

以前、5月6日のキース・ジャレットのコンサートに行くことだけを楽しみに毎日を過ごしています、と、書いておきながら、実は、こちらも予約していたのでした(笑) これから見境もなくライブを聴きに行ってしまいそうで、われながら怖いなあ、と思う今日この頃です。

2009 年の東京ジャズ以来の5年ぶりのルーさんの演奏なのですが、その間、カルテットのメンバー・チェンジはなく、ランディ・ジョンストン (g)、敦賀明子(org)、田井中福司 (dr) という編成のままで、しかも、"Blues Walk" 、"Wee"、"Whisky Drinking Woman"、"Alligator Bogaloo" など、かなりの曲目は同じで、"What a Wonderful World" でサッチモの真似をして一節歌うのも同じで、さらには5年前と同じダジャレまで使っていました(笑) 

じゃあ、マンネリでつまらなかったのか、というと、全然そんなことはなく、これなら、毎日同じ曲の演奏を聴いても楽しいだろうなあ、というくらいでした。御年 88 歳のルーさんにとっては、もはや5年くらいはちょっと前のことなのかもしれませんが、その間、彼が嬉々として、同じ曲を吹き、同じ冗談を飛ばして(笑)、飽きずにいたのだろうなあ、と、微笑ましく感じました。

フリーク・トーンに頼らないで、シンプルでオーソドックスに楽器を鳴らすのが持ち味で、力任せなところがないのがよかったのか、年齢による衰えはほとんど感じません。艶やかなトーンで滑らかによく歌うソロは健在です。親しみやすい人柄も相変わらずで、フィニッシュの合図をするふりをしてフェイントをかけてみたり、ソロを取っている敦賀さんををタオルで扇いであげたりして、会場の笑いを誘い、相変わらずのオヤジギャグを連発し、と、ジャズ界の生ける伝説でありながら、ご大層なところを全然見せずに、リラックスした素敵な演奏を繰り広げていました。一瞬、私と目が合ったときに、手を振ってくれたような気がするのですが、気のせいだったかもしれません(笑) でも、そんなことを気軽にしてくれそうな気さくさが感じられました。

5年前のフェステバルでの短時間のステージではよくわかっていなかったのですが、メンバーの方々の充実振りも凄いものがあります。ルー・ドナルドソンのバックのオルガン・トリオ、というと、グルーブ重視なのかな、というイメージがあって、確かに、"Alligator Bogaloo" や、"Midnight Creeper" のような曲では、極上のグルーブを生み出していたのですが、それだけではなく、スタンダードやジャズ・オリジナルのナンバーでは目が覚めるようなソロを連発していました。ギターやオルガンでビバップのフレーズをこんなに流麗に弾きこなせることは驚きでしたし、ドラム・ソロの多彩さには感動しました。リーダーのソロが終わって熱気が失せる、というようなことは全くありませんでした。これだけのメンバーがレベルが高く一体感がある演奏を繰り広げながらも、気取ったところや、気難しいところは全然感じられないのは、リーダーの音楽と人柄によるといえるのかもしれません。

ステージで演奏された "Over the Rainbow" や、アンコールでの "Bye Bye Blackbird" のメロディーを口ずさみながら、幸せな気持ちで帰宅しました。